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腰を支えていた手が、移動を始める。
脇腹から更に上がってきたところで、泉夏は僅かに身を捩った。
それは決して強いものではなかった。
けれども確かな否定に違いなく。
予想もしていなかった泉夏の動きに、秀王は唖然とする。
繋がっていたふたりの唇は離れ。
行き場をなくした手は、再び彼女の腰へ逆戻りした。
微かに乱れた息をしつつ、互いに無言で見合う。
「もしかして、痛くしたりした?」
それじゃないと確信に近いものを感じつつ。
かと言ってそれ以外の理由が思い付かず。
秀王は平静を装って尋ねた。
誰よりも、大事なひとだ。
恋人の間柄になれてからは、何よりも大切にしてきた。
特にこういう時は、努めて優しく接してきたつもりだった。
苦痛を与えるやり方では今回もしていないと、ほぼ断言出来た。
案の定、泉夏はすぐさま首を左右に振ってきた。
分かってはいたけれども、秀王はとりあえずほっと胸を撫で下ろした。
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