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安堵したと同時。
新たな疑問が湧き起こる。
ならばたった今の自分を拒絶する動きはなんだったのだろう、と。
『もう少しだけ、こうしていたい』
ねだってきたのは、他ならぬ彼女だった。
いつにも増して可愛らしく甘えてこられ、それを断る理由などどこにもなかった。
そもそも彼女に誘われようか誘われまいが『こうしたい欲望』は男として常に持ち合わせているのだから。
もう少しどころか、もっとずっと。
ふたりの思いは同じで、合意の上での行為のはずだった。
だから余計に、困惑と驚きは大きい。
正直に白状するのなら少なからずどころか、結構深く傷付いている。
彼女の言動の真意を測り兼ね、とりあえずじっと答えを待つ他ない。
秀王が不安を隠し切れない中、やがて泉夏は口を開いた。
「そうじゃ、なくて」
「ない……?」
「私が先生にして欲しい事とは……今はちょっと、違うから」
言い淀みつつ。
それでも自分の気持ちを、泉夏ははっきりと口にする。
遠慮がちでありつつも紛れもないダメ出しに、秀王に後頭部を殴られたかのような衝撃が走った。
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