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「そんな風にされると、訳が分からなくなる」
外気に晒されていた泉夏の白い太股に逡巡の末そっと触れ、迷いながらも秀王は吐き出す。
「もしかしたら嫌われてるんじゃないかって、不安になる」
思い詰めたような表情でよもやの事を言われ、泉夏は驚いてしまう。
「先生を嫌いになるはずがない」
泉夏は大急ぎで否定する。
心からの本心だった。
紆余曲折を経て想いが通じ合ったと同時、遠距離での恋愛が始まった。
それでもお互いを信じ合い、遠い距離も乗り越えてきた。
何年も想い続けた彼と、ようやくこうしていつでも会えるようになったのに、嬉しさこそあれ嫌う理由など全くなかった。
「本当に?」
「本当に」
「なら。いつものようにしてて欲しい」
「してるよ?」
「本当に?」
「本当にしてる」
いつになく少ししつこいくらいの秀王の念押しに、泉夏は力強く頷く。
だがその後ちょっと申し訳なさそうに声を潜めた泉夏に、彼の表情は再び引き締まった。
「けど、先生」
「けど?」
「だけど、ちょっとだけ違うの」
この期に及んでなお言い訳のようなものを並べる彼女の事が、秀王はいよいよ分からなくなる。
こんな事は滅多にないが、柄にもなく思わずむきになってしまう自分がいた。
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