男女間の思考の相違

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「泉夏が大学の課題を真剣にやってたから、邪魔をしないようにと思ってたんだけど。……ごめんね?」 宥めるように、秀王は泉夏の背中を優しく撫でた。 それは罪の意識からの口から出まかせではなく、嘘偽りない本心だった。 昨日大学での講義を終えた足で、そのまま真っ直ぐ自分のマンションを訪れていた彼女。 夜は二人でキッチンに立ち、新しく買ってあったワインを開封し、ゆったりと食事を楽しんだ。 話題の新作映画が早くも動画配信サービスで視聴可能になっており、ソファに仲良く並んで座って観た。 ベッドに入ってからは、いつものように幸せな夜を過ごした。 平日より遅めに起きた今朝は簡単な朝食を済ませ、お昼は外で食べようと決定していた。 それまでの時間は家でのんびり過ごす事にすれば、来週提出のレポートの続きを少しだけ書いてもいいかと訊かれ、二つ返事で了承した。 ならばと、自分は一昨日購入したばかりの小説を開いたのだった。 特に話しかけられもせず、彼女の妨げにならぬよう、こちらからも会話は控えていた。 初めの内はそれとなく彼女の様子を窺っていたのが、パソコン画面と向き合う真剣な顔に変化はなかった。 彼女を確認する間隔も次第に空き、お互いそれぞれの時間に没頭していたとすっかり信じて疑わなかったのだけれども、どうやらそれは間違いだったらしい。
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