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左頬に、秀王の手が触れてくる。
変に彼を意識してしまい、いよいよ泉夏は焦ってしまう。
こんな風に彼と向かい合って座るのは、果てない快楽を与えられる時間だけ。
それ以外では、今まで一度もなかった。
彼の指が太股に触れ、自分の上へ座るよう暗に勧めてきた時は、だからかなり驚いてしまった。
いきなりの誘いは勿論、下着が見えるのではないかという不安。
まるで女の自分から誘っているかのようでもあり、それは迷いもする。
けれど最終的に彼に押し切られる形で、今こうなってる現実。
どうしてもその時の事が脳裏に甦ってしまい、挙動不審になる一方だった。
「どうかした?」
とぼけているのではなく、多分本当に理解出来てない彼が首を傾げてくる。
誰よりも能力があって、飛び抜けた才能があるくせに、こういう所だけは鈍い。
常より鈍感な部類に入る彼に『気付いて欲しい』と願う事は、酷だろう。
伝えようか伝えまいかかなり逡巡したが、泉夏は決意した。
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