昼の森

5/7
前へ
/336ページ
次へ
 エレノアはこのような足場の悪い森を歩いたことなどなかった。枝や草に足がからまり、うまく歩けない。しまいには転んでしまう。 「痛っ!」 「またかよ~。ほらつかまれ」  その度に呆れた顔のヒューゴが手を貸してくれる。 (この人、意外と世話焼きね……)  だが、頻繁すぎてさっきから手を繋がれたままだ。 (なんか恥ずかしい……)  ヒューゴは背が高く、よく鍛えられていて強そうな体つきをしていた。転びそうになっても、いとも簡単にエレノアを支えてくれる。    段差なども持ち上げてくれたり、抱えて下ろしたりしてくれた。 (それに……)  エレノアは彼の横顔をチラリと見た。  切れ長の凛々しい大きな目に、ごげ茶色の髪の毛。鼻筋も通っていて、なかなかに格好いい。  だだ、さっきからずっと厳しい顔をしているのが気になる。だから少し怖い。  頬にはエレノアが杖を振り回した時についたであろう、傷が付いていた。 (あれくらいなら治せるんだけど……)   「あの、ヒューゴ? 何か川を見つける当てはあるのですか?」 「確かではないが、獣の足跡や水辺を好む植物がないかを見ている」 「なるほど」 「お前こそ、魔法で何とかできないのか? 空を飛んで上空から見るとかあるんだろ?」 「できません! わたしは魔法の修行を頑張ってこなかったので、難しいことはできません!」  自分の魔法は頼りにならないことを知ってもらうために、エレノアは声を張って答えた。 「お前……あきれた奴だな。堂々と自分の怠慢ぶりを言うか!?」 「それは……怠慢だったのは、わたしも反省しています」  エレノアはうつむいてしまった。    確かに、もっと真面目に修行に取り組んでおけば、地下にいた兵士たちも助けられたはずだ。今もこの森からすぐに出られたに違いない。
/336ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加