夜の森

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夜の森

 森が暗くなってきた。日が暮れるのだろう。  風が木々を揺らす音や虫の声、鳥の声が急に怖く感じる。  身震いをしたエレノアは、無意識にヒューゴの腕を握った。 「今日はこの辺で休もう」  木と木の間が離れた場所でヒューゴが足を止めた。これだけ歩いても川は見つからなかった。 (まさかの野宿……)  最悪だ。お手洗いも外。本当に最悪だ。  ヒューゴが枝を集めて、ポーチから細い木の棒をこすって火をつけ、その火を枝の間に置いた。 「何をするのですか?」 「火を起こす」  だが、枝になかなか火が燃え移らず苦戦しているようだった。 「わたしが!」  エレノアは魔法で火をつけた。 「便利だな!」  ずっと難しい顔をしていたヒューゴが笑った。エレノアもつられて笑う。この数時間で妙な絆ができた気がする。 「少しここで待っていろ」  そう言うとヒューゴはどこかへ消えていった。  エレノアは近くにあった丸太に座って彼の戻りを待った。心細かったが、頑張って耐えた。  しばらくして戻ってきたヒューゴの手には、死んだ小型の動物、ウサゲがいた。ウサゲの特徴である長い耳をつかんで持っている。 「ひいっ!」 「(さば)くから水をたくさん出してくれ」  エレノアは言われたとおり、氷で大きなボウルを作って、水を溜めた。  ヒューゴからぐちゅぐちゅした生々しい音がする。エレノアはウサゲの解体を直視できず、耳をふさいでやり過ごした。
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