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オンディーヌの城
「きゃっ!」
落下するような感覚のあと、地面に着地した。
ここに飛ばされる瞬間にかばってくれたのか、ヒューゴがエレノアを抱きかかえている。
(ち、近っ!)
エレノアはヒューゴから離れて深呼吸し、気持ちを整えて、周囲を観察した。
「ここは? お城……?」
エレノアたちは城の広間にいた。殺風景で薄暗く、冷たい。
「危なかったのう」
そう言って現れたのは美しい女性だった。豊満な胸を見せつけるかのように露出の多い白いロングドレスを着ている。夜の湖のような暗い青色の髪が印象的だった。
「わらわの名はオンディーヌ。ようこそ、我が城へ」
「あのっ! 助けてくれたのですか?」
「そうだ。精霊たちが教えてくれた。移動魔法もろくに使えず、通信もできず、精霊と話もできない、へっぽこ魔法使いが森の中で迷子になっている。助けてとな。どんな間抜けな奴か見てやろうと思ったのだ」
オンディーヌは澄ました顔をしてすらすらと厳しい事を言ってのけた。
「えっ……」
「よりによって、魔法使いの故郷でもあるタイドスの森で迷子になるとはな。なるほど、間抜けな顔しておる。お主の一族は皆、優秀なのにな。のう、エレノア王女殿下」
(この人はわたしのことを知っている?!)
オンディーヌはエレノアの瞳をじっと見つめた。瞳の奥の何かを見据えるように。
「力はあるようだが……使いこなせていない。とんだ怠け者のようだ」
「……ぐう」
ヒューゴの前で恥ずかしい。でも本当のことだから言い返せない。
「ぐうの音は出るのだな」
オンディーヌが失笑している。本当に恥ずかしい。
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