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オンディーヌがヒューゴの腕にねちっこく絡まっている。
エレノアは何だか二人の間に割って入りたい気分だった。二人がくっついているのが妙に気になってしかたがなかった。
「役立たずのへっぽこ魔法使いはこの部屋を使え」
足を止めたオンディーヌがエレノアに指し示したのは、質素な飾りのない扉の前だった。
「ヒューゴは?」
「心配するな、朝には返してやる。今のお主にヒューゴの隣は似合わない」
「……」
「それと……」
オンディーヌはエレノアがまとっているヒューゴのマントを指差した。
「これはヒューゴのものだろう?」
「そうですが……」
ヒューゴが剣を振っている時、一人で心細かったエレノアは、ヒューゴのマントを肩からかけていた。彼のマントに包まれていると安心できたのだ。
「あっ……」
マントをエレノアから強引に奪ったオンディーヌは、ヒューゴにマントをかけて言った。
「マントがある方が格好いい」
ヒューゴの腕を軽く叩いて、オンディーヌは満足げに微笑んだ。
「じゃあな。へっぽこ。朝までまだ時間がある。ゆっくりと休むがよい」
オンディーヌは手のひらをひらひらさせながら、ヒューゴを連れて長い廊下をどこかへ去っていった。
「あっ、まっ……」
ヒューゴは、取り残されたエレノアを心配そうに何度も何度も振り返っていた。
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