オンディーヌの城

4/5
前へ
/336ページ
次へ
 二人が見えなくなり、薄暗い廊下にポツンと残されたエレノアは、しょんぼりしながら部屋の扉を開けた。  中は真っ暗だったので、魔法で指先に光を灯しながら奥へと進んでいった。 「……せま」  中には飾りのない木のテーブルと椅子、ベッドがあるだけだった。ローフォード城で働く人の部屋より質素で狭い。  気晴らしに窓の外を見ようと思い、カーテンを開けたが、真っ暗で何も見えなかった。 「はぁ、疲れた」  エレノアは勢いよくベットに飛び込んだ。 「かたっ……!」  身体をベッドの床板に打ちつけ、思わず身を起こした。ローフォード城のエレノアのベッドのようにふかふかではなかった。 (……寝よう)  魔法で身を綺麗にして、布団を被る。 「さむ……」  掛け布団も薄い。  どうしてこんなところにいるのだろう。昨日まで何不自由なく平和に暮らしていたのに。  今日は森で死にそうになって、ここでは硬くて寒いベッドで眠らなければいけない。まだ葉っぱの方が柔らかかった。ヒューゴのマントの方が暖かかった。もう、暖かくてふかふかのベッドで眠れないのだろうか。それに……。 (ヒューゴもとられた……)  今頃二人は……イチャイチャ……。  自分は暗くて寒い部屋に一人っきり。悲しくなって、涙が出てくる。  しくしく泣いていると扉を叩く音がした。
/336ページ

最初のコメントを投稿しよう!

70人が本棚に入れています
本棚に追加