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二人が見えなくなり、薄暗い廊下にポツンと残されたエレノアは、しょんぼりしながら部屋の扉を開けた。
中は真っ暗だったので、魔法で指先に光を灯しながら奥へと進んでいった。
「……せま」
中には飾りのない木のテーブルと椅子、ベッドがあるだけだった。ローフォード城で働く人の部屋より質素で狭い。
気晴らしに窓の外を見ようと思い、カーテンを開けたが、真っ暗で何も見えなかった。
「はぁ、疲れた」
エレノアは勢いよくベットに飛び込んだ。
「かたっ……!」
身体をベッドの床板に打ちつけ、思わず身を起こした。ローフォード城のエレノアのベッドのようにふかふかではなかった。
(……寝よう)
魔法で身を綺麗にして、布団を被る。
「さむ……」
掛け布団も薄い。
どうしてこんなところにいるのだろう。昨日まで何不自由なく平和に暮らしていたのに。
今日は森で死にそうになって、ここでは硬くて寒いベッドで眠らなければいけない。まだ葉っぱの方が柔らかかった。ヒューゴのマントの方が暖かかった。もう、暖かくてふかふかのベッドで眠れないのだろうか。それに……。
(ヒューゴもとられた……)
今頃二人は……イチャイチャ……。
自分は暗くて寒い部屋に一人っきり。悲しくなって、涙が出てくる。
しくしく泣いていると扉を叩く音がした。
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