壁を崩す

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 辺りはみるみる暗くなり、頭上から熱い砂や小石が振ってくる。 (──!? 何が起こったの!?)  振り返れば、ボルカン山から黒い煙が出ていた。 (噴火!?) 「きゃっ!」  エレノアのすぐそばを大きな石がかすめ、ドスンという衝撃音を立てて地面に落ちた。 (これは……)  ──大変なことになった。  エレノアは、愕然としながら周囲を見回した。    マントのお陰か、エレノアに被害はなかった。だが、ボルカン山に近いタガンには、大きな石や熱い灰が大量に降り注いでいる。先ほどの地震で、フィンレーに結界を張る魔力が残っていないのだろう。  ローフォードも同じだ。エレノアが張った結界は、壁近くのごく一部にすぎないため、そのほかの地域に石や灰が降り注いでいる。  ──このままでは辺りが焦土と化す。  エレノアはタガンにいるフィンレーとヒューゴを探した。だけれども、逃げまどう民で混乱して見つけられなかった。 (きっと民を避難させているのね……)  ぐずぐずしている時間はない。こうしている間にも、人々は命の危険にさらされている。  エレノアは空に向かって杖を掲げた。これをしたらもう二度と、大切な人たちに会えないかも知れない。もともと魔力も減っている。  けれども、他に守る術がない。  大切な人たちを守るには、こうするしかない──。  エレノアは目を閉じて大切な人たちのことを思った。  両親、兄、師、ヒューゴ、バージル、オンディーヌ、そして……フィンレー!  フィンレーにもう一度会いたかった。触れて欲しかった。声を聞きたかった。一目でいいから顔を見たかった。  いつの間にか涙があふれていた。  泣きながら、すべてを飲み込んで声を出した。 「精霊よ、力を貸して──」
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