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◇◇◇
エレノアの魔法は瞬く間に広がった。
ローフォードを、タガンを、オンディーン湖を火山の被害を受けるタイドスと帝国の一部を優しい光が包み込む。
熱い砂や石の雨は止み、夜のように暗くなった視界が明るくなっていく。
逃げまどっていた人々は足を止め、光の発生源を探した。
魔法を諦め、タイドスの民を避難させていたフィンレーも同じだった。
「あれは……エレノア!」
エレノアはしばらく空に向かって杖を掲げていたが、やがて力なく膝から崩れた。
「エレノア──!」
フィンレーはエレノアのいる方向へ我を忘れて走った。
「エレノア!!」
彼女まではまだまだ遠い。
ふと、バージルがエレノアのそばに飛んできた。バージルはしばらくそこに留まり、エレノアの様子を確かめると、彼女を口に加えてこちらに向かって飛んできた。
「フィンレー……。エリーが一番会いたい人だろうから……」
フィンレーは目の前に下り立ったバージルから動かなくなったエレノアを受け取った。
黄色いリボンに翠の石。まぎれもなく自分への愛を示してくれている。
その愛するエレノアを抱きしめるが、体が氷のように冷たかった。胸に耳をやるが息をしているのかさえも分からない。脈も分からない。
「エレノアっ!! しっかりしろ! エレノア!!」
フィンレーは泣きながらエレノアに魔力を送った。だが、自分自身の魔力も枯渇寸前だ。頭がくらくらくして満足に送れない。
(──っ!)
倒れそうになったところ、誰かが支えてくれた。
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