サイラスとバッカス

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 クラウスは、杖を天高くかざした。 (この杖にサイラスの記憶を込めて、再び杖を手にした時、全てを思い出すように細工しておいた)  己がつくった壁の最後を見届けるまで、サイラスを終われなかったのだ。  運命とは不思議なものだ。五百年後にローフォードの太陽が失くなり、壁が壊れた後に杖を見つける事以外は、特に仕組んだ訳ではない。  全てを五百年後のローフォードの子孫に任せたつもりだ。 (それがまさか、自ら壊そうとするとは……)  サイラスはおかしな自分の行動を笑った。  ミサイルで人的な被害はなかったが、天変地異での被害は深刻そうだ。 (まだ魔法は使えるだろうか……?)  不思議なことに、魂から魔力が溢れてくる。人間の体でも以前のように魔法が使えそうだった。 (エレノア、お前がいなければ天変地異から人々を守ることができなかった。立派だったぞ。さすが、私の子孫) 「精霊よ、力を我に!」  サイラスが高らかに叫ぶと、杖の先端から直視できないほどの光があふれた。  それは被害を受けたタイドスと帝国の一部に広がっていく。  光を受けた建物は形を取り戻し、人々の傷は消えた。 *  どこかでまた咆哮が聞こえた。サイラスは咆哮が聞こえた方を振り返った。今なら分かる。ここから離れたあのオアシスの町からだ。   (そうか、バッカス、君は……。守ったのだな……大切な人を)  タイドスから流れてきた精霊たちが教えてくれた。
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