サイラスとバッカス

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 湖にある城で事の成り行きをずっと見ていたオンディーヌは、動かなくなったエレノアに心を痛めた。  あの人のマントをまとった、あの人に似ているあの人の子孫の少女は、立派に壁を壊す役目を果たした。   その命と引き換えに、ローフォードとタイドス、サラヴィオーク帝国を守ったのだ。 (エレノア……。立派じゃったぞ……)  オンディーヌはエレノアを思い、頭を垂れた。 (──!? これは!?)  懐かしい魔力を感じたオンディーヌは、城を飛び出た。  もう、ここに留まる必要はない。  かつてのように広くなったオンディーン湖をはやる気持ちを押さえきれず、全速力で泳いでいく。  この魔力はきっと──。五百年待ち続けた。 「会えた……。やっと会えた。ずっと待ってた」  姿形は違っているが、魂が教えてくれる。 「サイラス様……!」  サイラスは湖から上がったオンディーヌを見て、にっこりと微笑んだ。 「オンディーヌ。よくぞ役目を守ってくれた。ありがとう」  彼がいなくなる時、彼は言った。  ──『五百年後に会おう』と。 「約束通り、お会いできた……。嬉しい! サイラス様!」  オンディーヌはサイラスに飛び付いた。サイラスはオンディーヌの五百年を労うように、彼女の背中を優しく撫でた。
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