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 フィンレーは、かつて自分が使っていた見晴らしのいい部屋にエレノアを寝かせていた。  朝が来るとカーテンを開けてやる。今朝の空は澄みきった青色をしていた。  外には青々と茂った木々や色とりどりの草花。遠くを見れば水の豊かなオンディーン湖が見える。 「エレノア、どうですか? 見えますか? 気持ちのいい朝ですよ。植物もだいぶ増えました。ルーク陛下は自然と調和した、あなたが理想とした国をつくっていますよ」  フィンレーは、ベッドサイドに置いた椅子に座ると無言で横たわるエレノアの頭を愛おしそうに撫でた。ひととおり撫でると口づけをして魔力を流す。  このやり取りを三年は続けている。  エレノアの魔力は膨大だ。それでももう、かなり溜まってきていると、アレンやクラウス、目覚めたエレノアの両親は言う。  三年の間に髪も手足も伸びて、丸みを帯びたすらりとした姿に成長した。体の一部は正常に反応している。  だが、一向にエレノアは目覚めない。  それだけ大きな魔法を使い、体に負担をかけたのだ。 「いつになったら目覚めるのですか?」  フィンレーはエレノアの手を取った。彼女の手には婚約指輪が光っている。 (あなたを婚約者として縛り付けることを許してほしい)  初めて体を重ねた日、エレノアに『何かあれば他の人と幸せになって』と言われていたが、そうする気は全くない。  そもそも、なぜ彼女はそのようなことを口走ったのだろう? こうなることが分かっていたのだろうか。  フィンレーはエレノアの手を己の頬に擦り付けた。温かい手だった。  彼女はもう目覚めないかも知れないとも言われている。諦めて他の人を探せとも。   (私は諦めない……!)  エレノアの手をそっと布団にしまったフィンレーは、エレノアのおでこに口づけを落として立ち上がった。 「行ってきます。エレノア」
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