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今朝もフィンレーはエレノアに魔力を流す。この時間がエレノアは楽しみで仕方がなかった。
──そしてやってくる別れの時間。
(行かないで! 気付いて! わたしは起きているよ!)
朝が来るたび、エレノアは叫び続けた。だが、フィンレーには届かない。
その度にエレノアは絶望した。また一人だけの寂しい時間がくる。
「あ、エレノア見てください! 大きな虹が!」
(虹? そうのなの。見たいなぁ)
「今日は何か良いことがあるといいのですが」
フィンレーはエレノアの髪を愛おしそうに撫でた。
(そうね。フィンレーに良いことがありますように)
「では行ってきます」
(行かないで! わたしはここにいるよ……。そばにいて。──さみしいよ……)
『自分に何かあれば他の人と幸せになってね』とは言ったものの、意識を取り戻した今、彼を失う事がたまらなく怖かった。
*
その日の夜、フィンレーの様子がおかしかった。
(どうしたの? いいことはなかったの?)
「今日はヒューゴがローフォードにいらっしゃいましたので、バージルも呼んで三人で飲んできました」
(あ、お酒に酔ってるのね。珍しい)
「お二人は明日、エレノアに会いにいらっしゃるそうです」
(それは楽しみ!)
「お二人は嫁探しを頑張っていらっしゃいます。空回ってますが。特に竜。それはいいのですが……」
フィンレーはエレノアの頬に手をやった。
「エレノア……。私は寂しいのです……」
優しく何度も何度もエレノアの頬を撫でる。
(フィンレー……。わたしもだよ)
「私を見て欲しい。あなたに笑いかけてもらいたい。抱きしめてもらいたい……。エレノア……」
そしてフィンレーはエレノアに口づけをした。
(んんっ! ん!?)
だが、今日の口づけはいつもと違い、少し……いや、かなり激しい。
「エレノア、エレノア!」
フィンレーはエレノアの横たわる布団に潜り込み、エレノアの服を脱がせた。
「以前、オンディーヌに聞きました。こうすれば目覚める可能性があると。ずっと待っていましたが、もう我慢できません。荒療治ですが、どうか許して欲しい──」
(えっ!? あ、やだ! あっ……!)
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