3/5
前へ
/336ページ
次へ
 今朝もフィンレーはエレノアに魔力を流す。この時間がエレノアは楽しみで仕方がなかった。  ──そしてやってくる別れの時間。 (行かないで! 気付いて! わたしは起きているよ!)    朝が来るたび、エレノアは叫び続けた。だが、フィンレーには届かない。  その度にエレノアは絶望した。また一人だけの寂しい時間がくる。 「あ、エレノア見てください! 大きな虹が!」 (虹? そうのなの。見たいなぁ) 「今日は何か良いことがあるといいのですが」  フィンレーはエレノアの髪を愛おしそうに撫でた。 (そうね。フィンレーに良いことがありますように) 「では行ってきます」 (行かないで! わたしはここにいるよ……。そばにいて。──さみしいよ……) 『自分に何かあれば他の人と幸せになってね』とは言ったものの、意識を取り戻した今、彼を失う事がたまらなく怖かった。 *  その日の夜、フィンレーの様子がおかしかった。 (どうしたの? いいことはなかったの?) 「今日はヒューゴがローフォードにいらっしゃいましたので、バージルも呼んで三人で飲んできました」 (あ、お酒に酔ってるのね。珍しい) 「お二人は明日、エレノアに会いにいらっしゃるそうです」 (それは楽しみ!) 「お二人は嫁探しを頑張っていらっしゃいます。空回ってますが。特に竜。それはいいのですが……」  フィンレーはエレノアの頬に手をやった。 「エレノア……。私は寂しいのです……」  優しく何度も何度もエレノアの頬を撫でる。 (フィンレー……。わたしもだよ) 「私を見て欲しい。あなたに笑いかけてもらいたい。抱きしめてもらいたい……。エレノア……」  そしてフィンレーはエレノアに口づけをした。 (んんっ! ん!?)  だが、今日の口づけはいつもと違い、少し……いや、かなり激しい。 「エレノア、エレノア!」  フィンレーはエレノアの横たわる布団に潜り込み、エレノアの服を脱がせた。 「以前、オンディーヌに聞きました。こうすれば目覚める可能性があると。ずっと待っていましたが、もう我慢できません。荒療治ですが、どうか許して欲しい──」 (えっ!? あ、やだ! あっ……!)
/336ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加