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(顔が見たい……!)
「ふぃ……れ」
エレノアは力を振り絞って声を発した。大きな声は出なかった。
フィンレーは眠ってしまったのだろうか? なかなか気付いてくれない。
「ふぃんれ……」
何とか腕を動かして彼の背に体に触れてみようとした。たが、腕は少ししか動かず、思うようには動かせない。
(くっ……、動いてぇっ……!)
「──エレノアっ!!??」
飛び起きたフィンレーは、エレノアの顔を覗き込んだ。
フィンレーのエレノアを見つめる目がみるみる大きくなっていく。
「エレノア……! 目覚めたのか!?」
(う……)
うなずきたかったのだが、首を動かせなかった。かわりに口を動かした。
「ふぃんれー」
フィンレーの名前を呼ぶ。今度は聞こえたろうか?
そして、ままならない腕を何とか動かそうと再び試みた。フィンレーの目に溜まった涙を拭くために。
「エレノア……っ!」
やはり腕は上がらなかったが、エレノアが腕を動かそうとしていることに気付いたフィンレーが、その手を取って、愛おしそうに自分の頬に撫でつけた。
「エレノア……! エレノア! 待っていた。ずっと待っていた! エレノア!!」
フィンレーは泣きながら、力をいっぱいエレノアを抱き締めた──。
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