5/5
前へ
/336ページ
次へ
(顔が見たい……!) 「ふぃ……れ」  エレノアは力を振り絞って声を発した。大きな声は出なかった。  フィンレーは眠ってしまったのだろうか?   なかなか気付いてくれない。 「ふぃんれ……」  何とか腕を動かして彼の背に体に触れてみようとした。たが、腕は少ししか動かず、思うようには動かせない。 (くっ……、動いてぇっ……!) 「──エレノアっ!!??」  飛び起きたフィンレーは、エレノアの顔を覗き込んだ。  フィンレーのエレノアを見つめる目がみるみる大きくなっていく。 「エレノア……! 目覚めたのか!?」 (う……)   うなずきたかったのだが、首を動かせなかった。かわりに口を動かした。 「ふぃんれー」  フィンレーの名前を呼ぶ。今度は聞こえたろうか?    そして、ままならない腕を何とか動かそうと再び試みた。フィンレーの目に溜まった涙を拭くために。 「エレノア……っ!」  やはり腕は上がらなかったが、エレノアが腕を動かそうとしていることに気付いたフィンレーが、その手を取って、愛おしそうに自分の頬に撫でつけた。 「エレノア……! エレノア! 待っていた。ずっと待っていた! エレノア!!」    フィンレーは泣きながら、力をいっぱいエレノアを抱き締めた──。
/336ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加