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──列車が出発する合図が鳴った。
「エレノア? そろそろ行こう」
「はい」
そして、わたしはフィンレーと結婚した。
これから夫の新しい勤務先、帝都バレイダムに向かう。わたしたちは見送りに来た人と別れ、列車に乗り込んだ。
夫はヒューゴに呼ばれ、帝国の次の宰相になることが決まった。しばらくはサイラス、いやクラウス様について学ぶらしい。夫はずっと帝国で働きたかったらしいが、わたしが眠っているためローフォードを動けなかったのだ。
「フィンレー。待っててくれてありがとう。他の人と幸せになっても……良くなかったわ」
「あなた以外とは幸せになれないからな。言ったろう? 思い続けるのも愛だと」
「そうね!」
夫が優しい眼差しを向けて笑う。わたしも夫に向かって笑った。
「さ、わたしはクラウス様に殴り込みに行かないとね! まだ直接お会いできていないもの! ご先祖様だとかそんなの関係ないんだから! ぼこぼこにしてやるわ!」
わたしは両手を振り回し、殴る仕草をした。
「やめろ、エレノア。漫画の読みすぎだ」
夫は声を出して笑った。
「遊園地にも連れて行ってね」
「ああ、行こう」
そうこうしているうちに列車が動き出した。
帝都では女性も立派に働いているという。わたしも帝都でできることを見つけたい。誰かの役に立ちたい。人々の笑顔を見たい。
帝都でやりたいことがたくさんある!
わたしは列車の窓を開けて、大切な人たちに手を振った。
両親や兄夫婦、アレン先生──。
「行ってきます!」
今日の空は、出発の日にふさわしい、大きな虹のかかった空だった。
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