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怠け者の王女、エレノア
目覚めると外はまっ暗だった。いつものように寝坊して、遅めの時間に起きたのに、日が昇っていない。
(あれ?)
不審に思っていると、慌てた様子の師であるアレンがやってきた。
「エレノア! 緊急事態です。早く支度を!」
*
エレノアは城の広間に追い詰められていた。
目の前にはアレンの背中。エレノアを守るように両手を広げている。
「お兄様……。なぜ……」
兄は濃紺色の軍服を着た見たことのない人々を引き連れていた。兄のすぐ横には、鋭い目付きをした若い男が長剣を構えている。そこそこの階級にあるらしく、彼だけ赤いマントをまとっていた。
「エリー、早くそれを渡せ!」
兄がエレノアの持っている杖をよこせと言ってくる。これは先ほど、アレンから受け取ったものだ。
「渡してはなりません! 逃げなさい! 早く! エレノア!」
エレノアはアレンの切迫した声を聞いて、思わず兄から逃げた。
背後で兄とアレンの魔法がぶつかり合う音がする。
(怖い──っ!)
その音に混じって聞こえる多数の足音。その足音はエレノアを追いかけてきていた──。
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