怠け者の王女、エレノア

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◇◇◇  エレノアは聖ローフォード王国の第一王女として生まれた。  ローフォードの王族は大魔法使いサイラスを祖先に持ち、膨大な魔力を持って生まれてくる。    優しい両親の愛情をあふれんばかりに受け、蝶よ花よと大切に育てられたエレノア。  何でも手に入り、不自由なことなど何ひとつなかった。  エレノアには兄が一人いて、その兄、ルークが王位を継ぐことになっていたし、三年後、エレノアが二十歳になったら、歴代の王女がそうしてきたように有力者の息子に嫁ぐことになっていた。  ──きっと、自分の人生は何もしなくても安泰だ。  誰かが自分の生き方を決めてくれて、それに従って生きていく。何もできない怠け者でも王女であるがゆえに、誰かに守られ、生きていける。  努力など無駄と考え、魔法の修行や勉学を疎かにしてきた。  ましてや王族として知っておくべき世の中の情勢など知ろうとは思わなかったし、王族の責務など考えもしなかった。  人形のように自分の意思を持たず、ただ淡々と日々を過ごしていた。
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