69人が本棚に入れています
本棚に追加
「放して!」
エレノアはマントの男に捕まってしまった。手首をつかまれ、逃げられない。
「一緒に来い。ルークが待っている」
「やだ!」
なんとか逃れようと、アレンに持たされた長い杖を振り回した。杖の先についている宝石は国にとって大切なものだから、肌身離さず持つようにと言われている。
暴れていると男の横顔に杖の先端が当たった。
「あ、ごめんなさ……」
が、男はまったく動じていなかった。
「大人しく来い! 手荒な真似はしたくない」
捕まれている手に力がこもる。なんて強い力なのだろう。
「離して!」
なかなか離してくれないため、捕まれている手から男の体に魔法で電流を流した。しばらくの間、体を流れ続けるだろう。
「──っ!」
男が手を離した。
(今だ!)
その隙にエレノアは、得意ではない移動魔法を使って転送ゲートまで逃げることにした。失敗してしまうかも知れないが、なんとか男から逃れたい。
「光の精霊よ! 力を貸して!」
握っていた杖が魔力をぐんぐん吸っていく。
(何これ!? すごい……!)
杖が魔法を支えてくれる気がした。
今まで杖を使って魔法を使った事はないが、エレノアは、初めて杖を通して魔法を使うことにした。この勢いなら失敗せずに転送ゲートまで行けるかも知れない。
「待て!」
苦痛を浮かべている男が、エレノアに向かって手を伸ばした──……。
最初のコメントを投稿しよう!