怠け者の王女、エレノア

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「放して!」  エレノアはマントの男に捕まってしまった。手首をつかまれ、逃げられない。 「一緒に来い。ルークが待っている」 「やだ!」  なんとか逃れようと、アレンに持たされた長い杖を振り回した。杖の先についている宝石は国にとって大切なものだから、肌身離さず持つようにと言われている。  暴れていると男の横顔に杖の先端が当たった。 「あ、ごめんなさ……」  が、男はまったく動じていなかった。 「大人しく来い! 手荒な真似はしたくない」  捕まれている手に力がこもる。なんて強い力なのだろう。 「離して!」  なかなか離してくれないため、捕まれている手から男の体に魔法で電流を流した。しばらくの間、体を流れ続けるだろう。 「──っ!」  男が手を離した。 (今だ!)  その隙にエレノアは、得意ではない移動魔法を使って転送ゲートまで逃げることにした。失敗してしまうかも知れないが、なんとか男から逃れたい。 「光の精霊よ! 力を貸して!」  握っていた杖が魔力をぐんぐん吸っていく。 (何これ!? すごい……!)  杖が魔法を支えてくれる気がした。    今まで杖を使って魔法を使った事はないが、エレノアは、初めて杖を通して魔法を使うことにした。この勢いなら失敗せずに転送ゲートまで行けるかも知れない。 「待て!」  苦痛を浮かべている男が、エレノアに向かって手を伸ばした──……。
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