昼の森

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昼の森

「痛ぁ……」  エレノアは着地に失敗して、尻もちをついてしまった。  杖を通して魔法が成ったとき、いつもより威力が増していると感じたが、無事に転送ゲートに着いたのだろうか?  エレノアは周囲を確認した。 「えっ!? どこここ!?」  城の中にいたはずなのに、森の中にいた。木が生い茂っていて薄暗く、湿っぽい土の匂いがする。 「なんでぇ!?」  ろくに修行していないエレノアが移動できるのは、せいぜい城の地下から三階にある自室くらいまでだ。杖のせいで、どこか遠くまで来てしまった!? 「どうしよう……」  自分の国でないことは確かだ。ローフォードならば、真っ暗のはずだから。  エレノアの国は地下にあった。  地下にあるといっても、地上と同じように太陽があり、川が流れ草木が生い茂っている。それらは全て魔法でコントロールされていた。  それが今朝、どういう訳か太陽が昇ってこなかったのだ。  だから、おそらくここはローフォードではない。 (どうやったら城に戻れる!? もう一度、移動魔法を使う? でも、どこにいるのか分からないのに、むやみに魔法を使うのは良くない気がする。魔力を消費するだけだし、危険な場所に行ってしまうかも……)  修行不足のせいで魔法で通信もできないし、精霊と話もできない。 「詰んだ……」  エレノアは呆然として空を仰いだ。
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