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「介護疲れでの人殺しは免除があります。地獄落ちは免れますが天国には行けません」
「それじゃどこに行くんだね?」
「どこにも行けない、殺した相手とずっと見つめ合いながら彷徨うんです。本当に愛し合っていたなら逆にご褒美ですかね」
「それも辛いな、他には?」
「一人殺したなら三人の命を救うことです」
「どんな手法でもいいのかね?」
「ええ、命を救う方法に手段はありません」
「金で救ってもいいのかね?」
「ええ、お父さんの全財産をつぎ込めばアフリカの飢餓難民なら相当助けることが出来るでしょう」
「しかし寿命一律法案でわしは死に方を選ばなくてはならない。寄付しても死ぬんじゃもったいない」
「それじゃ別人格になりますが私が齢を若くして差し上げましょう。これ本当は神に叱られる、ここだけの話にして下さいね。その代わり元には戻れませんよ」
「幾つぐらいになれるのかね?」
「幾つでもどなたでもいいですよ、これまでの人生の軌跡の範疇ならお好きなように」
武下は考えた。やはり成人になった頃が一番楽しかった。
「この世のことは覚えているかね?」
「多分ほとんど忘れています。この場所夢で見たことがあるなって感じることがあるでしょ、あれが前世の記憶なんです」
二十歳で二枚目、金持ちの倅。それなら寿命一律法案の対象になるまで55年もある。
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