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輪廻Ⅱ『寿命』
「賛成多数にて『寿命一律』法案は可決しました」
議場には複雑な溜息が洩れた。
「私はまだよく読んでいないが、既に75歳を超えている人はどうなるんだろう」
与党7期連続当選している82歳のベテラン議員、武下昇が若手新人の香村隆に訊いた。
「実は私もよく調べておりません。まさかこの法案が通るなんて考えてもいませんでしたから」
昨年から台頭してきた極右政党のリーダーが提出した法案である。本人もそれが通るとは思ってもいなかった。
「香村君、発案者を訪ねてみよう」
二人は発案者のマイク鈴木事務所に出掛けた。事務所にはこの二人のように詳細を確認するために多くの議員が集まっていた。また事務所の周りには多くの市民も取り巻いている。既に賛成派と反対派がプラカードを下げて一触即発の様相を呈していた。重鎮武下が現れたので他の議員は一先ず引き下がった。
「もう、玄関鍵閉めちゃって、カーテンも引いて」
マイク鈴木は秘書に指示してソファーにドンと座り込んだ。
「どうぞ武下さん」
武下はマイク鈴木の前に座った。
「こんな法案が通るとは考えていなかった」
「私もそうですよ、あなた方与党はどうして反対してくれなかったんですか?もう元に戻れませんよ。どうしてくれるんですか?」
マイク鈴木は逆手にとって反発した。
「どうしてって君等が出した法案じゃないか。出すから悪い」
「違います。挙手したあなた方が悪い。これまで賛成なんてしてくれたことなどなかったじゃありませんか。それを寿命一律法案だけを通すなんておかしい。どうして賛成したんですか、私が訊きたい」
通常通り反対していれば与党多数で否決された。
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