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自称、祖父の近藤忠志だ。彼は隣人で亡くなった祖父の親友だったらしい。祖父が存命だった頃、お互いに一人暮らしだということもあって、互いの自宅を行き来していた。それは祖父が亡くなった今でも続き、この家の番犬代わりだと言って、和室でごろごろしている。
「あっ。また僕のミリちゃん抱き枕を勝手に」
忠志はアニメキャラの抱き枕を抱きしめて狸寝入りを決め込んでいた。
「おじいちゃんの親友だからって、勝手に他人を家に入れちゃうなんてさあ。忠志さんも他人なんだけどーーもう」
ツッコミどころが多すぎて面倒になった。
「壮真、うろうろしてないで早く髪の毛を乾かしなさい」
「姉ちゃんもさあ」
文句を言おうとして、雨から救出された洗濯物が目に入った。
「……洗濯物ありがとう」
「いいのよ。もう、ツンデレなんだから」
頭をわしゃわしゃと乱暴に拭かれたタオルから、ふんわりと柔軟剤の匂いがした。母が好きだった香りだった。
「自分でやるから」
「それ、お母さんのお惣菜?」
「今日も食べていく気?」
「だって、雨なんだもん」
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