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「うん。五時限目の体育でマラソンやらされたんだよ」
「じゃあ、これでも食べてな」
レンジで温めた白米に味噌をぬっただけのおにぎりだったが、食べると素朴で懐かしい味だった。
「美味い」
「でしょ? お母さんが、実母の方ね。パートから帰って来てお腹すいてたのね。こっそりこうして食べてたの。味噌のいい匂いがして私も小さなおにぎり作ってもらって食べてみたら美味しくてね。今もたまに作っちゃうの」
「うん。分かる」
「そう。良かった」
結衣は炊飯器のスイッチを入れ、おもむろに海老の唐揚げを一つ頬張った。
「で、自分はつまみ食いかよ」
「ごめん。我慢できなくて。宿題終わったら早めに食べちゃおうか。あの人達来るか分からないし」
「うん」
急いで数学のプリントをやっつける間、結衣は小鍋に豚肉と野菜をぶちこんでいた。今日は豚汁らしい。
「お風呂は?」
「ご飯食べたら入る」
「あんた、すぐ湯冷めするもんね」
「うるせー」
姉弟ってこうなのかな、と思うことがある。
「ただいまー。おじいちゃん、象みたいないびきかいてた」
「兄さんお帰り」
樹の顔を見て、結衣は電子レンジで惣菜を温め始めた。
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