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「えっ。ちょっと。鍵かけてたはずだけど」
「俺、もしもの時用に叔父さんから鍵預かってるもん。それよりほーら、お土産のケーキだぞ」
「あっ! これ並ばないと買えないやつじゃない。食後のデザート!」
結衣はいそいそと冷蔵庫にケーキをしまう。
「もしもの時でしょ? 今じゃないよね」
「んー、今でしょ!」
奇怪な手つきで決めポーズをした。
「やめろ」
「まあ、いいじゃん。腹減ったー。お前もビール飲むか?」
「飲むわけないだろ。僕、未成年!」
「私は飲む!」
食卓がみるみるうちにやかましくなっていく。
「おお、帰って来たか」
「じいちゃん、ボタンかけ間違えてる。直すからちょっと動かないで」
「悪いな孫よ」
面倒なのか覚えてないのか、皆を孫と呼ぶ。
「食べよう」
「いただきまーす」
家族のふりをして、皆で手を合わせる。
「手羽先食べにくいが美味いよな。この皿、骨おきにするぞ」
「兄ちゃん、野菜も食べてよ」
「壮真、だんだん姉ちゃんに似てきたな」
「うるさいな。兄ちゃんは肉食べるのが早すぎるんだよ」
「分かった、分かった。」
樹がサラダのトマトを嫌そうに食べた。
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