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「おじいちゃん、海老のひげには気をつけてね。よく噛んで食べてよ」
「うむ」
全く知らない人間からしたら、本当の家族に見えるのだろうか。
「おーい、助けてくれえ」
手羽先にかぶりついた瞬間、玄関で情けない声が聞こえた。
「今の、お父さんの声じゃない」
皆でそろりそろりとドアに近寄ると、
「警察呼びますよ!」
と、女性の声もした。
「何、何なの」
玄関ドアを開けると、ゾンビの仮装をした正直と正直の腕を捻り上げた女子高生が立っていた。
「壮真君! このゾンビ、不審者!」
「村上さん、何で君が?」
「忘れ物届けに来たの。このジャージ、壮真君のでしょ?」
紙袋を渡してきた時も、片手は正直の手首を掴んでいた。
「痛いって。何でもいいから助けてくれ」
ハロウィンの仮装をした正直が消え入りそうな声を出した。
「あっ、ごめんなさい」
「お嬢さん、力強いね。おじさん、びっくりしちゃった」
捻り上げられた手首をさすりながら、手洗い場に消えた。
「ゾンビはほっといて座りましょう。あなた、壮真のクラスメイトだったのね」
「村上澟です」
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