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たまに帰っていましたよ。
でもね、ただいまって部屋に入っても、妻も娘も私の顔すら見ない。
妻は私に食事も出さなかったし、お風呂もすすめませんでしたよ。いえ、恨んではいません。
だって、かつて私が彼女たちに同じようなことをしていたのですから。
全く妻の話も聞かず、娘の相手もせず、ただ、自分の世界だけを大事にしていた。
ええ、皮肉なものです。
あははは、なかなかお詳しいですね。好きなのですか。あぁぁ、ノーランのあの映画で興味を持って。エンターテイメントは偉大ですね。
そうです、彼女たちが物質で、私が反物質。
鏡像のようにかつては似ていたのに、わずかな差異から違いは決定的になり、私の存在と彼女たちの存在は対消滅していったのですが、ほんの少し多かった彼女たちが存在し、私は消えて透明人間ですよ。
はぁ、詩的な表現ですか? そんな違いますよ。専門分野になると冗舌になる、研究者の悪癖です。
そう、だから勧進帳の生姜焼きはハーメルンの大立て者! 青信号が灯ったら乳歯の行進を追い越そう!
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