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家を出ても奇妙なもので、誰もまともに相手にしてくれないんですよ。
そういえば、研究室でも、もう長いこと、誰とも喋っていないですね。
あそこが私の、唯一の居場所だったのに。
こうね、町を歩いていてもね、誰か一人ぐらいはこちらを気にしたりね、するものでしょう。
それがね、ないんですよ、最近は。
みんなね、すぅー、と私の横を通りすぎていく。
本当に透明人間ですよ。
それが妙に腹立たしく思えまして、一度ね、体格の良い男性にね、ぶつかってやろうと思ったんです。
前から歩いてきた男性に真正面から近づきましてね、ドンと、ぶつかってやろうと。
男性はまるで私のことなど気にせずに迫ってきます。それが、腹立たしくて。
世の中は徹底的に私を存在しないものとするのかと、ならばぶつかってやるぞと、ええ、あのときは、奇妙なんですが、男にね、殺意にも似た感情を抱いていました。
いや、世界に対しての殺意かな。
男のね、すました顔が目前に迫ってきました。
ぶつかってやる!
全身に力をこめて、私は男に突進しました。
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