波動方程式のヴィクター

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家を出ても奇妙なもので、誰もまともに相手にしてくれないんですよ。 そういえば、研究室でも、もう長いこと、誰とも喋っていないですね。 あそこが私の、唯一の居場所だったのに。 こうね、町を歩いていてもね、誰か一人ぐらいはこちらを気にしたりね、するものでしょう。 それがね、ないんですよ、最近は。 みんなね、すぅー、と私の横を通りすぎていく。 本当に透明人間ですよ。 それが妙に腹立たしく思えまして、一度ね、体格の良い男性にね、ぶつかってやろうと思ったんです。 前から歩いてきた男性に真正面から近づきましてね、ドンと、ぶつかってやろうと。 男性はまるで私のことなど気にせずに迫ってきます。それが、腹立たしくて。 世の中は徹底的に私を存在しないものとするのかと、ならばぶつかってやるぞと、ええ、あのときは、奇妙なんですが、男にね、殺意にも似た感情を抱いていました。 いや、世界に対しての殺意かな。 男のね、すました顔が目前に迫ってきました。 ぶつかってやる! 全身に力をこめて、私は男に突進しました。
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