2009年

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2009年

 二〇〇九年。十歳になった真治は、初めて恋をしました。同じ年の優華ちゃんです。好きになった気持ちを抑えることはできません。朝起きてから夜眠るまで、真治はいつでも優華ちゃんのことを考えていました。  どうしようか、と考えたとき、一つのアイデアが浮かびました。そしてそれを、実行しました。  真治は優華ちゃんを呼び出して、いきなり手を繋ぎました。そしてキスをしました。押し倒して、何度もしました。 「これ、ドラマでやってた。好きな人の気持ちを伝える方法なんだよ」  優華ちゃんは絶叫していました。助けて、助けて、と必死に声を上げました。すると先生が来て、真治を引き剥がしました。 「何をやっているんだ!」  血相を変えている先生に対して、真治は「求愛行動です」と端的に答えました。すると真治は先生から殴られました。何度も。 「馬鹿野郎!」  しかし、真治は自分の行動が「馬鹿野郎」だと思いませんでした。何がいけないんだろう。そして、箸のことを思い浮かべていました。  だけど、再び親が呼ばれたとき、「求愛行動もやってはいけないんだ」と認識しました。 「もう、これ以上親を困らせないで」  声を枯らして涙を流すお母さんを見て、真治は少しだけ悲しい気持ちになりました。そして、優華ちゃんを嫌いになりました。
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