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2013年
二〇一三年。十四歳の真治はメガネを買いました。勉強をし続けていて、目が悪くなったのです。
「いっぱい勉強をした証ね」
お母さんは喜んでいました。
「これからもたくさん勉強するんだぞ」
父も感心した声で言いました。
ただ、真治自身は全く嬉しくありませんでした。
部活動はコンピューター部。友人は二人だけ。みんなが楽しそうに部活動に励んでいる間も、真治は地味な友達とパソコンで研究をしていました。歴史上の人物をパワーポイントにまとめていました。
「僕は毛利元就についてまとめたんだけど、君は何についてまとめたんだい?」
そんな退屈な会話ばかりする日々。本当は逃げ出したかったですが、真治は真面目な自分を守るために「僕は小林一茶です」と敬語を使ってまでキャラを守り通しました。そうでもしないと、偽りの仮面がボロボロに壊れてしまうからです。
成績は相変わらず学校で上位でした。先生から注目されるほど勉強ができた真治は、両親からも期待される存在になっていました。
「こんな真面目な子供が育ったなんて、お母さん誇りに思うわ」
両親は甘々で、真治はなんでも買ってもらえました。ただ、ここでゲームを買ってしまうと不真面目に思われるから、文房具や参考書を買ってもらうようにしていました。
本当は、暴れたい。サッカーボールに針を刺して空気を抜きたい。教室中に絵具をばら撒きたい。好きな女の子とセックスしたい。箸と一緒に遊びたい。そんな欲望が脳内を渦巻いていましたが、すぐに消し去るように勉強に集中しました。ついには、自分のやりたいことを叶えることができませんでした。それでも、真治は「自分は幸せだ」と思い込むようにしました。
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