2人が本棚に入れています
本棚に追加
その反応は娘に向けるものとしては不自然に思えた。彼女が言うように、本当にこの家では彼女の存在を黙殺しているのだろうか。彼女の両親の様子をそれとなく伺うと、二人はチラリと扉の外の気配を気にしていた。それから、ほっと胸を撫で下ろし、ようやく口を開いた。
「そう、友達なのね……いらっしゃい」
母親の方から言葉が発せられた。その声は優しげであったが、どこか機械的でもあった。
「こんにちは……」
僕はぎこちなく頭を下げた。
「ゆっくりしていってください」
母親はそう言うと、再び口を閉じた。
「ありがとうございます」
僕は礼を言うと、彼女に促されるままにリビングを後にした。背後から「ごめんなさい……」という囁くような謝罪の声が聞こえた気がしたが、気づかないふりをした。
僕達は二階にある彼女の部屋へと向かった。部屋の造りはシンプルだったが、可愛らしい小物がたくさん置いてあった。女の子の部屋だ。僕は少し落ち着かない気分になった。
「どうぞ、座ってください」
彼女はベッドの端を軽く叩いて言った。僕は言われるまま腰かけた。すぐそばにいる彼女の香りが鼻腔をくすぐる。なんだかドキドキしてきた。変に緊張しているのを隠したくて、僕はつっけんどんに彼女に問いかけた。
最初のコメントを投稿しよう!