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「あの……君って、どうしてみんなと一緒にいないんだい?」
彼女は少しだけ考えるような仕草をした。そして静かに答えた。
「私は、人と違うから」
「それは……どういう……?」
彼女は小さく息をつくと、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「私には兄がいます。私たちはとても仲の良い兄妹でした。お互いの事をよく理解していて、なんでも話し合える間柄でした。けれどあるとき、些細なことがきっかけで喧嘩になってしまったのです。今思えば、本当に些細な事です」
彼女は淡々と口を動かす。まるで他人事を語っているかのように。
「私は彼の手を力任せに振り払いました。勢い余ってよろめいた兄が足を滑らせ、川に落ちてしまいました」
「……えっ……?」
一瞬、頭が真っ白になった。その話はまるであの噂話のようではないか。彼女が兄の命を奪ったという、あの……。
彼女は僕の様子など気に留めることなく話を続ける。しかし、語られた結末は予想に反していた。
「その後、兄は意識不明の重体になり病院に搬送されました。けれど奇跡的に命を取り留めたのです」
「それじゃあ……」
「えぇ。彼は生きています。ただ……」
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