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彼女はこくりと首肯すると、窓の外へと視線を移した。
「私は、……私の存在を認識してくれる人がいてもいいのではないかと思えるようになりました」
僕は彼女の横顔を見つめることしかできなかった。
「……そうか」
彼女の言葉の真意はよく分からない。でも、彼女が何かしらの変化を遂げたことは確かだ。彼女は窓から視線を外すと、再び僕の方を見た。その目に先程までの無機質さはなく、代わりに柔らかな光をたたえていた。
「私の存在を認めてくれる人がいるのならば、私は空気ではなく、ちゃんとした人間として生きられる気がします」
「うん、きっと大丈夫だよ。それにお兄さんだって、君の事を必ず思い出すよ」
根拠はなかったけれど、何故かそう思えた。
「だと、いいのですが……」
彼女は不安げに呟いた。僕はそんな彼女に向かって、無責任な笑みを向ける。
「きっと大丈夫さ」
「……」
彼女は僕から目を逸らすと、少しだけ考えるような仕草をした。
「どうしたの?」
「いえ、その……」
彼女は小さく首を振ってから、もう一度僕と目を合わせた。
「あの……、一つお願いがあるんですが……」
「なんだい?」
彼女は僅かに躊躇う素振りを見せた後、ゆっくりと唇を動かして言った。
「兄になってもらえませんか?」
「え?」
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