文字を食う虫

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文字を食う虫

 ふと思う。  自分は食べ物の味に対して執着が薄いのではないかと。  ずっと同じものを食べていても気にしないし、何を食べても美味しい。  白米にふりかけが何食続こうと苦じゃないんですよね。    こんな話をすると現代日本ではあり得ないだろ、なんて言われるかもしれません。  もしくは不幸自慢だとして一定数の反感を買うかもしれませんね。  けれど事実として幼い頃の檸檬はずっとお腹が空いていたのを覚えています。    その当時テレビはあったし、おもちゃも家にありました。  けれどどうやらそれは別れた父親の実家から送られてきたものだったようです。  そのおかげで物は充実していましたが、家にお金はなく明日の食べ物にも困る生活だったような。  あ、全然過去を憂いているわけではなく、その時はその時で幸せだったと思います。    その時の記憶が影響しているんでしょうね。  どんな味であれお腹いっぱいになれば満足なんです。  それによって困ることといえば誰かとご飯を食べる時に「何を食べたいか」と問われても本心から「何でもいい」と言ってしまうこと。  大人になった今でもお腹いっぱいにさえなれば何でもいいと思ってしまうんですよね。  ただ最近はもう少し大人になってきて、相手が望むものを考えてこれが食べたいと言えるようになりました。  いやぁ、檸檬も成長したもんだ。  でもその環境が今の檸檬を作ってくれた、というのは大いにあります。  妄想にお金はかからず、創作も紙と鉛筆があればできます。集中すれば時間も空腹すらも忘れられる。  文字通り物語を食って生きてきたのかもしれませんね。  次は物語で食っていけるように頑張る番だと思っています。  その次は物語で自分以外の誰かも幸せにできるように。  まだまだ長い人生。  一体幾つの目標を達成できるかはわかりませんが何事も一歩ずつ。  これからの自分が楽しみです。
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