1. 尚人

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 新宿東口に十八時集合。もらったビラの記載内容を頼りに集合場所に向かった。 ゴールデンウィークの新宿東口はあらゆる待ち合わせで人がごった返していた。 「順教学院大学テニスサークルピンチョスの新歓にご参加の方〜〜〜〜〜!!」 【順教学院大学 ピンチョス】と書かれた紙を掲げながら先輩であろう男が叫んでいた。  少し胸がざわついた。はっきりと理由はわからないが、過去にこのざわつきを感じたときには、良いことが起こった試しはなかった。  目に見えない大きな圧力に押しつぶされるような感覚だった。人知れず出鼻をくじかれ、掲げる紙の方へ歩いた。 「なあーに持ってんの、なあーに持ってんの、飲みたいかーら持ってんの!」  新歓が始まるやいなや、各テーブルでコールが始まっていた。  ビールをピッチャーで一気飲みしたり、日本酒を水のように飲み続けたり、ついこの間まで受験勉強をしていた僕には、大きすぎるギャップに頭の整理がつかなかった。  飲み会が進むにつれて、当初の座席は原型をとどめなくなり、ノリがいいメンバーは吸い寄せられるように同じテーブルに集まり、特定のテーブルが派手に騒ぐようになった。
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