5人が本棚に入れています
本棚に追加
入学直後、同じクラスの太一に誘われ、なんとなくハンドボール部の見学に行き、そのまま入部した。
男子ハンドボール部は、地区予選で一回勝てれば大喜びするような弱小チームだった。一方、女子ハンドボールは県大会常連で、関東大会にも出場経験のある強豪という環境だった。
この状況だと、男子ハンドボール部の立場が無いように見えるが、全くそうではなかった。むしろ弱いことがネタになっていて、男子ハンドボール部は、学校内で人気を博していた。
なぜなら、男子ハンドボール部は皆明るかったからだ。
お調子者揃いで、クラスの中心人物もたくさんいて、人気者がとにかく多かった。ただ、弱かった。ハンドボールの実力だけがなかった。
それでも、面白さがハンドボールの実力の乏しさを遥かに凌駕していたため、ハンドボール部の評判の高さは、人気実力を兼ね備えた野球部に肉薄するほどだった。
その奇跡のチームの中で僕は唯一の「まともな奴」で、精神的支柱という立ち位置だった。
悪ノリが過ぎた時のストッパーの役割を担っており、僕がいることでハンドボールの雰囲気はマイルドになっていた。
最初のコメントを投稿しよう!