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普通の人が異質という環境は、僕にとって非常に心地が良かった。
人前でふざけたり、体を張ったりすることは苦手だったが、他のハンドボール部の奴と同じくらいチヤホヤされたいし、モテたいと思っていた。
ハンドボール部という環境は、そんな平凡な僕が過剰評価される環境だった。
『ちょっと、もうやめろよ』
『馬鹿じゃないの』
『ごめんねー、こいつら頭おかしいのよ』
こういう類の言葉しか発していないのに、僕の評判はお調子者たちと同じくらい上々だった。
葵と初めて話したきっかけも、太一がクラスの皆の前で一発ギャグをしてスベった時に、
「あいつあんな感じだけど、部活は一生懸命なんだよ」
と話しかけたことだった。
ハンドボール部の面々が、次々とネタを振りまいてくれるので、今の状況をそのまま話すだけで、僕は落ち着いていてセンスのある奴になっていた。これがきっかけで僕は葵と仲良くなり、そのまま付き合い、卒業まで付き合い続けたので、高校時代のほとんどを「彼女あり」で過ごした。この肩書が僕により箔をつけた。
「尚人くんは葵と付き合ってるもんねー」
「葵とお似合いだよねー」
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