1. 尚人

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 こんな状況を打破したいし、可愛い女の子と仲良くなって、付き合うといった日常を送りたいと思っていた。  ただ、僕の高校生活はあまりにも純朴で、傷がなかった。  葵との恋愛は、初心で甘酸っぱかった。そのため、一途で淡い恋愛こそ理想形、ちゃらついたものは悪という考えが、葵と別れた今でも頭の中にこびりついていて、ピンチョスで心から楽しむ一歩が踏み出せなかった。  一歩が踏み出せない奥手の僕は、ただただ悶々とした気持ちを抱えながらサークル活動に勤しみ、愛想笑いを振りまき続けた。  椎名と瀬戸から誘われた時は、勝手にテニサー=ヤリサーというイメージを持っていたので、葵とともに築き上げた清廉潔白な恋愛のイメージを、誰かの手によって、半ば強引にでも崩してもらえると思っていた。  説得されたから仕方なくそうなってしまった、あくまでも原因は自分ではない。清廉潔白なイメージを保ったまま、ヤリサー生活も味わえると思っていた。  ただ、蓋を開ければモテる奴はモテるし、モテない奴はモテない、飲み会をするたびに差が広がるだけだった。
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