1. 尚人

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史也が言うように、僕は真緒の顔が本当にタイプで、大好きだ。 真緒の顔を見ていると何をされても許せるし、真緒の彼氏ということが誇らしくて仕方がなかったので、真緒を強く咎めることが出来なかった。 「いくら顔が可愛いからって、流石にもう限界だろ、当たり前のようだけどな、人間は顔だけじゃないんだぞ。お前はだいぶ彼女に振り回されている。少し冷静になれよ」 史也は呆れたように僕をにらみながら、氷が溶け切ってほぼ水になっているハイボールをすすった。 史也が言っていることは正論だったが、別れようとすぐに決心をつけられるほど心は動かなかった。 「一つ案がある」 周斗が誇らしげな顔で言った。別の人と浮気をしていると知った瞬間、何か企んでいる顔をしていることに気にはなっていた。 「尚人は真緒の顔が好きなんだよな、顔が可愛いから付き合ってるんだよな」 「うーん、なんかそう言われるのは癪だけど、真緒の顔は可愛いと思う」 素直に認めるのは何となく負けな気がして、感情をできるだけ排除した声で答えた。 「ってことは、顔が可愛くなくなれば、お前の好きな気持ちは小さくなって、簡単に別れを切り出せるんじゃないか?」
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