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浮気だろうが何だろうが、どんなことをされても真緒という存在だけで日常に輝きが出るのなら、このままの関係を続けたほうが良い。そんな気もしていた。
一歩踏み出せないもどかしさが、虚無感の増大に拍車をかけていた。
* * * *
こんな時に限って、仕事は落ち着いている。
仕事に没頭して、真緒が頭に浮かぶ時間を少しでも減らしたかったが、きっちり定時で帰れてしまう。ひどいときは、昼休憩後から暇を持て余しており、仕事中も真緒のことを考えてしまっていた。
僕とは対象的に、忙しそうにしていた真緒は、僕が暇を持て余している間も仕事に没頭して、僕のことを考える時間がどんどん減っているのだろうか。
被害妄想だけが膨らんでいた。
まだ日が沈んでいない時間帯にもかかわらず、僕はすでに帰路についていた。
仕事仲間と飲みに行くこともなければ、趣味もない。仕事後のただただ無駄な六時間が漂っていた。抗うように、会社の最寄り駅を通り過ぎ、二駅先まで歩くことにした。
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