1. 尚人

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 初心者の分際で、「料理 手間がかかる」と検索をかけた。色んなサイトを閲覧した結果、チーズハンバーグを作ることにした。  ただ、ハンバーグの具材はおろか、ボウル、フライパンの蓋、フライ返しなど、不足している調理器具も多々あった。真緒を忘れるための精神安定剤を探すように、スーパーを駆け回った。  これで少しは楽になるかもしれない、僕は殆どやったことのない料理にすがりついていた。  今の僕には、頼れるものが何もない、料理をどうにかすがれるものにする必要があった。   第一章  尚人   停滞した寒気の影響で、例年よりも桜の開花が遅いと報道されていた。  おかげで、入学式の時には満開だった。僕を取り巻く全てのものが諸手を挙げて入学を歓迎しているように思えた。名門私立の順教学院大学に入学できるなんて、合格発表から二ヶ月弱たった今でもまだ少し夢見心地だった。 「尚人、頑張るのよ」  両親は優しい言葉をかけ、僕の背中を押してくれた。  最高なキャンパスライフへの期待と快く私立大学の進学を快諾してくれた両親への恩返しを胸に抱き、キャンパスライフをスタートさせた。 * * * *
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