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恵理子は電話を切った。
引っ越してきたばかりのワンルームのアパートを、ゆっくりと首を左から右に回して眺める。段ボール箱が、記憶通りなら十六個あるはずだ。
やはり良かったのだと、恵理子は思った。
この殺風景な部屋に、母を連れてくる訳にはいかない。
最後に、手に持っている電話を見つめた。
急に会いたいと電話をかけてきた母。いったい、何の話があるのだろう。もう、何年も会っていないというのに。
恵理子は部屋の隅からダウンジャケットと帆布製のトートバッグを拾い上げ、バッグの中から部屋の鍵を取り出しながらドアに向かった。
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