お見合い

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お見合い

 人恋しくなる季節と言われれば、そうなのかもしれない。  まだ残暑厳しいと言っていたニュースが、今週に入り途端に上着を勧めてくるのだから。  彼氏のいる友達がうらやましいと思わないこともない。  とは言え、それでもだ。  これだけは本当に勘弁して。  何が悲しくて、おばあちゃんのススメでお見合い結婚しなきゃいけなんだあ!? *  とりあえず暇な日曜を過ごしていたわたしは、言われたままにホテルのレストランに向かう。  言われたままの趣味じゃない、オフホワイトのワンピースに袖を通して。  だって他に着ていけそうな服、持ってないし。  いい年して……とかは言いっこ無しで。  振り袖を準備されなかっただけ良しとしよう。  ――――それで?  目の前の席に付いたこの人も、似たような事情に屈してここにいる……という理解でいいのだろうか。  だって結構なイケメンっぷりだ。相手に困ろうはずがない。  冷やかしの類なんじゃないか、まさかの結婚詐欺ではないだろうかと疑ってみたくなる。 「こんな事言うと不躾なんですけど、結婚はしなくないんですよ。しかも『お見合い』って……ねぇ?」  牽制しようとしたつもりはなかったのに、言い方に棘があったかもしれない。だけど元々不本意なお見合いだ。おばあちゃんの顔に泥を塗ろうともわたしの知ったことではない。  驚いた様な顔をして目の前のイケメンが顔を上げる。 「あ、実は僕もです。職場でお世話になっている……取引先の会長さんの手前、ですね」  ハハハと乾いたように笑う。  冷やかしでも詐欺でもなかったらしく、やはりこの人もわたしと同じ境遇だったようだ。  いや、むしろ身内絡みで無いぶん、この人には断る術が絶対的に無いのだろう。何かしら○○ハラスメントと名前が付きそうだ。お見合いハラスメント?  う~む、気の毒に。
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