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「ハウスト、どうか……、どうか私を……嫌いに、ならないでください」
許されたい願いはこれだけです。
どうか嫌いにならないでくださいと。
私はハウストを見つめ、おそるおそる手を伸ばす。
拒まれたらどうしよう、迷いがよぎる。とても怖いです。
伸ばした手が触れる寸前で止まりそうになりました。でも、その手がハウストの大きな手に掴まれました。そして。
「どんな時も俺に触れることを恐れるな。お前だけに許していることだ」
「ぅっ、ハウスト……っ」
涙が込みあげました。
掴まれた手がそっと引き寄せられ、強く抱き締められる。
「ハウストっ、ハウスト……っ」
何度も名を呼び、彼の背中に両腕を回してしがみ付きました。
彼の肩に顔を埋めて泣いていると足にぎゅっと抱きつかれます。見下ろすとイスラでした。
「ブレイラ、だっこ」
オレを忘れるなとばかりに両手を伸ばされ、私の顔が綻ぶ。
私はイスラを抱き上げようとしましたが、その前に肩に手を置かれて制止されます。
何ごとかと振り返るとハウストは静かにイスラを見下ろしていました。
イスラを見つめるハウストの横顔は厳しいもので少しだけ怖い。
でもイスラは真っすぐにハウストを見上げて対峙しています。
最初に沈黙を破ったのはハウストでした。
「自分で呪縛を解いたのか」
「うん……」
イスラは緊張しながらも頷きました。
イスラが呪縛魔法をかけられてからいろいろありましたが、イラスの中ではハウストに怒られた時のままなのです。きっとハウストに怒られると思っているのかもしれません。
そんなイスラの緊張の中、ハウストがふっと穏やかな表情を浮かべます。
「そうか。……よく頑張ったな」
ハウストがそう言った瞬間、イスラの顔がパァッと明るくなりました。
そしてイスラの小さな体がハウストに抱き上げられる。イスラは照れ臭そうに、でも嬉しそうにハウストに抱き付きました。
「うんっ。オレ、がんばった!」
「良かったですね、イスラ」
はしゃぐ様子に笑いかけると、「うん!」とイスラが大きく頷く。
いい子いい子とイスラの頭を撫でてからハウストを見つめました。
「ハウスト、ありがとうございます。ほんとうに……っ」
嬉しくて、嬉しくて声が震えました。
そんな私をハウストは愛おしげに見つめて優しく口付けてくれたのでした。
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