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十二
「悠とこの子の母にはすまないことをしたと思っている」
駐車場の高級車の前。明日香と悠のカップルに、城ケ崎会長が深々と頭を下げた。
「だが無口でおとなしい悠が、あんな大声を出せたのは、みんな遠山さんのおかげと思っている」
明日香と悠は顔を見合わせる。
「シングルマザーや共働きのお母さんたちが働きやすい事業を我が社で始める計画があってね。君たちはふたりでひとつ。高校を卒業したら、将来の経営責任者を前提に、何が何でも来て貰うからね。働きながらでも大学を卒業できることを、ふたりで証明して欲しい。いいですね、遠山さん」
ふたりの顏に笑顔が浮かぶ。
「二、三日中に詳しいスケジュールを……。では悠、君のヒロインを大切にしたまえ」
城ケ崎会長の車が走り去る。
無口ですぐに顔が真っ赤。いつもに戻った悠が小声で話しかける。
「と、遠山先輩は、もう僕だけの先輩じゃありません。クラスカーストのトップ。学校のヒロインです。お、おめでとうございます」
明日香が首を軽く振る。「陰キャラ」で「ぼっち」の明日香が、満面の微笑で背伸びをする。
しっかり悠を抱きしめた。
「だけどやっぱり、悠ちゃんだけのヒロインだからね」
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