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一
高蔵寺高校といえば、都立の進学校として知られている。
学校前の大通り。二年特進コースの遠山明日香は、ビニール袋をカバンから出した。食べ終わったお菓子の箱やペットボトル、ストローを挿したままのジュースのパック。目に入ったゴミを、手際よくビニール袋に入れていく。
ほかの生徒たちは気にも留めず通り過ぎる。
時々、嘲るような笑いが投げかけられる。
そしてこの朝、ちょっとした出来事があった。明日香の目の前に、飲料水のペットボトルが放り出された。
振り返るとクラスメイトの結城がニヤニヤ笑っている。
「頼むぜ、清掃業者さん」
隣に生徒会会長の鈴木卓也がいた。長身で、女子の誰もがイケメンと認めている。明日香と同じ特進コース。
「おい」
苦笑いして結城に声をかけると、明日香の前から去った。
(恥ずかしいことなんかしていない)
明日香は心の中で何度もつぶやいた。ペットボトルをビニール袋に入れた。
ふと明日香を見つめる視線に気がつき、急いで振り返ってみたが登校生徒の集団にさえぎられた。最近、よく感じる視線だった。
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