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八
翌日の昼休憩。明日香はいつものように旧校舎の前のベンチに向った。お弁当は持っていなかった。花壇に目を向けると、ハッとした表情に変わる。そのままベンチに座ると、前を向いたまま、そっと口を開いた。
「内山くん、いるんでしょう。花壇に水ありがとう。隣に来てよ」
旧校舎の玄関の奥。悠が泣き出しそうな顔で出てきた。
悠の目の涙を見たとき、明日香の心は我慢することをやめた。
隠すことなく大声で泣いた。その横で、悠も慟哭していた。
ふたりが肩を並べて十分以上泣いていた。
明日香はハンカチで顔を拭くと、少しだけ笑顔を悠に見せた。
「何があったか知ってるんだね? もしかしたら噂になってるの?」
悠は答えなかった。答える代わりにこう言った。
「学校の裏の高蔵寺公園の掃除をしている生徒が何人かいます。遠山先輩を尊敬しているんです。僕だって……」
明日香の涙が止まった。これ以上、絶対泣いてはいけない。そんな思いに打たれて、悠の顔を見つめる。
「遠山先輩は、僕のヒロインです。クラスカーストのトップなんです」
悠は、一気に叫んで立ち上がった。
「僕ひとりだけじゃ足りないですか?」
そのまま明日香の前から遠くへ走り去った。
そのはずが、その場で動けなくなっていた。明日香が悠を後ろからしっかりと抱きしめていた。
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