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③
「なんか、奥さんいる人だった。知らなくてね。今日は、花火で商店街の出店やってんだって。奥さんと2人で。
行っていい?って聞いたら、誰か他の男と一緒なら良いって言われて。ムカついて、宮田に告っちゃった。宮田ならいいかなって。」
「なんか、重い話だね。」
「大人でしょ、ウチ。なめんなよ、宮田。」
「別になめてないけど」
「パピコそろそろいい感じに溶けてんじゃね?」
「うん。」
「ごめんね、宮田。」
「いや、うん。」
店の前のベンチに2人で座った。
「出店、焼きそばなんだって。」
「僕、祭りの焼きそば好きなんだ。」
「まじ?美味いよね。ま、店によるけどな。」
「ねえ。金森、付き合わないけど、一緒に焼きそば買いに行ってもいいよ。」
僕は、少しだけムカついていた。
「え?お店は?」
「あと10分で終わる。」
「まじ?」
「うん。」
金森は、バスで来たって言うから、歩いて会場に向かった。川辺で開かれる花火大会。商店街には出店が並んでいて、焼きそば屋を見つけるのは時間がかかりそうだった。
「さとる!」
声がする方を見ると翔ちゃんがいた。
「さとちゃん、久しぶりー。」
翔ちゃんのお母さんには久しぶりに会った。
「翔ちゃん、松男ジイと留守番じゃないの?」
「あ、お父ちゃんそう言ってた?翔がうるさいから、一緒に連れてきちゃった。え、さとちゃん、彼女連れてるの?やるう。高校生だね!」
「あ、…うん。」
翔ちゃんのお父さんは、翔ちゃんのお母さんの横で、ビールを飲みながら焼きそばを焼いていた。
金森はそれをまっすぐに見ていて、僕は金森の彼氏が誰なのかはっきりわかった。
「フイイィん!さとるー焼きそば毎度あり!」
翔ちゃんが、いつも持ってる零戦で僕を突いた。
「あ、じゃあ、2つください。」
お金を出そうとすると
「持ってけ、さとる。」
翔ちゃんのお父さんが、金森を見ながら言った。
「ありがとうございます。」
2人の間に無言の会話があったように思った。
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